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離婚するときに定めることが必要となる離婚に関する条件は夫婦ごとで異なりますが、代表的な項目として、子どもの親権者の指定、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割などがあります。
協議離婚の基本的な手続として、夫婦で話し合って離婚の条件を決めます。
もし、話し合っても解決できなかったり、話し合うこと自体が困難であるときは、家庭裁判所の離婚調停を利用します。
協議離婚するときは、夫婦間に生まれた未成年の子についての親権者の指定と養育費、婚姻中に作られた夫婦の共同財産を清算する方法などについて、夫婦が話し合いによって整理し、そこで決めた内容を離婚 公正証書など契約書に定めることが行われます。
離婚に関する各条件を公正証書に定めるときは、個々の条件を明確にします。
曖昧な部分を残しておくと、離婚後にあらためて協議することが必要になったり、その場合に協議が成立しないことで二人の間にトラブルが起きる恐れもあります。
以下では、離婚契約で定められる典型的な離婚条件について、簡単に説明しています。
夫婦の間に未成年の子どもがいる場合の離婚では、すべての未成年の子どもについて、離婚の届出時に父母のどちらか一方を親権者として指定しなければなりません。
離婚時における親権者の指定は夫婦の合意だけで定めることができ、親権者には母親を指定する割合が高いのですが、父親に親権者を指定することもあります。
この親権者の指定は、協議離婚の届出をするうえで必須の手続となることから、夫婦の話し合いで親権者を指定できなければ、協議離婚することができません。
そうしたことから、夫婦の間で「子の親権者の指定に合意があること」と「離婚する合意のできていること」は、協議離婚の手続をすすめる上で一丁目一番地となります。
夫婦が法律上の婚姻関係にある間は、夫婦に生まれた未成年の子どもにかかる親権は、両親が共同して行使します。(これを「共同親権」といいます)
親権とは、未成年の子どもの身の回りの世話やしつけをしたり、住まいを指定する「身上監護権」と、子どもの財産を管理したり契約を代理する「財産管理権」とから構成されています。
父母が婚姻している期間は、意識していなくとも、共同して親権を行使しています。
しかし、離婚した後は、父母のどちらか一方だけを親権者として指定することが法律上の仕組みになっています。(これを「単独親権」といいます)
このような法律上の制度になっているため、協議離婚の届出をするときは、夫婦の未成年の子ども全員それぞれについて、必ず親権者を指定しなくてはなりません。
もし、夫婦の協議で親権者を決められないときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、その調停において親権者を定めることになります。
このように、未成年の子どもの親権者を指定することは、協議離婚する手続上で必須の事項であることから、親権者の指定に関して夫婦の間に争いが生じると、協議離婚することができなくなります。
離婚することになった経緯などから、夫婦の間に感情面での摩擦があるときは、親権者の指定をすることが、離婚の条件全体のなかで駆け引き材料になることも起きます。
そうした紛争が起きて子どもの親権者が決まらなければ、面会交流、養育費の話し合いも進展しないことになり、離婚の手続きをすすめることが事実上で困難になります。
夫婦における協議又は家庭裁判所の調停によっても親権者が決まらないときは、離婚訴によって親権者を定めて離婚することを裁判所に請求します。
家庭裁判所は「母性の優先」「継続性の原則」「兄弟不分離」などの要素を踏まえて、子どもの福祉を優先して親権者を定めます。
対象となる子どもが乳幼児である場合には母親が親権者になることが多くなり、協議離婚でも、全体としては母親が親権者に指定される割合が高いです。
もちろん、婚姻期間における父母と子どもの関わり、生育した環境、母親の実状なども考慮したうえで、父親が親権者となるケースもあります。
また、親権者が子どもを監護養育することが原則になりますが、夫婦の間で合意ができるときは、親権者と監護者を別々にする(「分属」といいます)こともあります。
つまり、父母の一方が親権者となり、他方が監護者になるという整理です。
ただし、離婚後にも父母が共同して子どもに関わる形となるため、父母の関係が良好でなければ、子どもの監護方針などを巡って争いが起きることも心配されます。
そのため、父母だけで決めるときには何らの制約も受けませんが、家庭裁判所の実務においては、基本的に親権と監護権の分属を認めない方向であるとされます。
なお、離婚した後に親権者を変更するときは、家庭裁判所における手続き(調停または審判)を経ることが必要になります。
途中で親権者を変更することは、子どもにとっては大変に大きな影響を与えます。
そのため、家庭裁判所が、後見者的な立場から親権者の変更に関与して、子どもの権利を守る仕組みが法律制度で出来上がっています。
なお、子どもの監護者の変更は、離婚後も父母間の話し合いだけで定められます。
ただし、監護者の変更について父母間の協議で決着できないときは、家庭裁判所の調停又は審判で監護者を定めることになります。
経済的に自立できない子どもは、その父母に扶養する義務があります。
離婚することに伴って父母の一方が単独で親権者(=監護者)になりますと、他方の親は、離婚後における子どもの監護養育に必要となる費用を分担する義務を負います。
この離婚後の子どもの監護養育に必要となる費用の分担金を「養育費」と言います。
非親権者が養育費を負担する法律上の義務は、子どもが経済的な自立を期待できるようになる時期(成人、大学などの卒業)までは続くことになります。
養育費の具体的な支払い条件は、離婚時などにおける父母間の話し合いで自由に定めることができます。
いったん父母で養育費の支払い条件を定めても、その後になって何らかの事情が生じたことで養育費の負担が父母の間で不公平となる状態になったときは、あらためて父母で話し合って変更することができます。(これを専門語で「事情の変更」と言います)
また、親権者が再婚して子どもが再婚相手と養子縁組をして共同親権となったときは、非親権者の養育費を支払う義務が減免される可能性が高くなります。
もちろん、離婚した後に子どもが養子縁組をした事実を知っても、そのまま養育費を支払い続ける立派な親もあります。
養育費は、毎月の定期支払いが基本の支払方法となります。
養育費の月額をいくらに定めるかについて、法律で定める具体額はなく、父母の収入、などを踏まえて、父母の話し合いで決めることができます。
もし、夫婦で養育費を決めることができなければ、家庭裁判所の調停又は審判の制度を利用して養育費を定めることになります。
家庭裁判所の実務では、養育費を算定する参考資料として、東京と大阪の裁判官等で作成した平成15年の養育費算定表(東京・大阪養育費等研究会、令和元年12月23日に更新版公表)が利用されています。
養育費の算定表は、裁判所のホームページにも情報として掲載されており、広く一般に利用されています。
そのようなことから、家庭裁判所を利用しない協議離婚においても、夫婦の話し合いで養育費を定める際に、参考資料に利用されています。
算定表の養育費は低いとも言われ、実際には、夫婦の協議で婚姻期間中の生活実態も踏まえながら、算定表より高い水準で養育費を定める夫婦もたくさんあります。
算定表は養育費を算定するときの一つの目安になるものであり、夫婦の話し合いでは、算定表の範囲内で養育費を定める義務はまったくありません。
なお、離婚契約で定めた養育費の支払い条件は、契約した後においても父母それぞれの事情が変更になったときに変更することもあります。
父母の話し合いで変更できないときは、家庭裁判所に調停等の申し立てをします。
家庭裁判所の実務では、養育費の支払義務は子どもが成人するまでを基本としており、このようなことから、養育費の支払いは成人までという認識が一般に存在します。
ただし、子どもが早くに就職をして経済的に自立できることになれば、養育費が必要でなくなることもあります。
子どもが高校を卒業して働く見込みであれば、養育費の支払い期限を「子が満18歳に達した後の最初の3月までとする」と決めておくこともできます。
また、成人を過ぎても四年制大学などに通っていることで本人が経済的に自立できない状態にあれば、養育費が必要になっていることもあります。
子どもが大学を卒業することを前提として養育費を考えるのであれば、養育費の支払い期限を22歳となった後の3月までと定めることもできます。
家庭裁判所の調停、審判においても、養育費を負担する親の収入又は学歴などから、養育費の支払い期限を大学卒業まで認めることもあります。
近年では高学歴化が進んできていますので、子どもがすべての教育を終えるまでに要する総額はかなり高額になってきています。
子どもの将来における選択肢を広げることを考えると、教育に要する費用を養育費のなかで十分に確保してあげることが大切になります。
ただし、子どもが大学などに進学することには、父母の間で考え方の違いもあるでしょうし、離婚時にはあらかじめ詳細な条件を決められないこともあります。
そのようなときには、合意できた範囲を契約書に定めておき、詳細は子どもが実際に進学したときに父母の間で大学等の進学費用も含めて養育費の条件を協議して定める約束をしておく方法もあります。
なお、将来に父母の間で協議するという約束をすることは模範的な取り決め方に見えますし、公証役場のひな型契約書にも、そのように定められています。
しかし、離婚した後の遠い将来に、あらためて父母の間で子どもの学費の分担について協議して決定することは、現実には容易でないことが想像されます。
「公正証書で約束していた離婚後の協議では、負担額が折り合わず困っている」という相談を受けることも珍しくありません。
離婚時に各条件に関する契約をすすめるときに、将来の学費負担についての方向性だけでも夫婦の間で確認しておくと良いかもしれません。
離婚するときの話し合いで、夫婦の諸事情から、離婚しても養育費を支払わないことを夫婦の間で合意することもあります。
そうしたことになる事情として、養育費の支払いに代えて親権者に対して住宅を譲渡したり、離婚の成立後にも無償で住宅を使用させることを離婚の条件として認めることもあります。
また、父親が親権者となることで、収入の乏しい母親から養育費の支払いを受けないとすることもあります。
一方で、そうした養育費の支払いに代わる給付などもなく、単に養育費を支払わないという確認だけを行なうこともあります。
親権者となる母親側が、離婚してからは子の父母として相手と関わりを持ちたくないときに多く見られます。
こうした養育費を支払わないとの合意も、一応は有効な契約であると認められます。
ただし、そうした合意をした結果、子どもが生活することに困窮する事態になると、子ども本人から、必要となる扶養料を親に対して請求することができます。
子どもが経済的に困らず生活できる根拠もなく養育費を支払わない合意をすることは、子どもに良くない条件となりますので、父母とも慎重に判断することが求められます。
毎月の養育費には、子どもの風邪、歯痛などによる通院が生じたときの医療費も含まれると考えられます。
ただし、子どもが大きな病気をしたり、怪我によって、一時的に高額な医療費を監護親が負担しなければならないことも起こる可能性があります。
大きな医療費の出費については離婚時に予測することはできませんので、具体的に支払い条件を取り決めることはほとんど見られません。
こうした特別にかかる費用は、父母の間で医療費の負担を取り決めることになります。
離婚の成立によって夫婦の共同生活が解消すると、子どもは親権者(監護者)のもとで生活を送ることになります。
実親子の関係は、子の父母が離婚をしても解消しません。
養子縁組によって親子になっていた場合には、親子関係を解消するためには縁組解消が手続きとして必要になります。
親子の関係が変わらない限り、子の親権を失くした親は、離婚しても子どもと定期的に会って交流することにより、子どもの精神面における成長をたすける役割を果たすことができます。
離婚した後の非親権者(非監護者)と子どもが交流することを「面会交流(めんかいこうりゅう)」と言います。以前は「面接交渉」という言葉を使用していました。
面会交流は、原則は認められることになり、離婚後における子の親権者を指定するときに合わせて離婚条件の一つとして父母間で取り決めます。
面会交流の考え方
面会交流に関する条件の定め方は、どのように面会交流を実施することが子どもの福祉のために適切であるかという視点から考えます。
実際は、離婚に伴い非親権者になる親の権利として捉えられている側面も強いですが、法律の考え方としては、面会交流は子どもの福祉に資することを目的とします。
離婚契約では、面会交流の頻度(毎月〇回くらい)を決めておくことが一般的ですが、具体的な時間、場所、宿泊の有無、立会者の有無、贈り物の可否などまでを具体的に定めておくこともあります。
離婚した後にも父母間での意思疎通を良好にとれる関係があれば、面会交流の条件は大枠だけを決めておき、実施方法の詳細については面会交流の実施にあわせて父母で適宜状況を見ながら決めていくことが現実的な対応になります。
あまり細かく条件を事前に決めて契約として固めてしまっても、実際の面会交流を継続していく際に支障となってしまうことも考えられます。
子どもの健康状態は変わりやすく、学校などの行事予定によって、面会交流を父母間で定めたとおりに履行できないことも起こってくるからです。
ただし、父母の間に感情面で摩擦が存在し、調整することが難しい場合には、最低限の実施ルールをあらかじめ決めておく方が良いこともあります。
離婚後も父母に争いがあると、子どもの精神面に悪い影響が及ぶ心配もあります。
子どもを監護している親が面会交流を認めたくないときは、家庭裁判所における調停、審判によって面会交流の実施と方法を定めることもあります。
養育費と面会交流は、父母の双方が権利者と義務者の立場になります。
そうしたことから、それぞれの条件を関連付けて定めようとすることが見られます。
例えば、養育費を支払うことを条件に面会交流を認める、その反対に面会交流の実施を条件に養育費を支払うとの取り決めをしたいとの話しを聞くことがあります。
しかし、両方の条件は子どもの福祉を目的として定めるべきであり、父母の利害を調整するために両者を関連付けて定めることは法律上の考え方とは反します。
また、そうした条件による取り決めをすることは、将来に条件の不履行が起きたとき、父母の間でトラブルになることが予想されます。
養育費の支払い、面会交流の実施とも、守ることを前提に父母の間で条件を定めます。
婚姻していた期間に夫婦で一緒に協力して形成した財産は、離婚で共同生活を解消するときに清算して夫婦で配分します。
こうした夫婦の共同財産の清算を「財産分与(ざいさんぶんよ)」と言います。
離婚のときに財産を分ける割合は、夫婦の話し合いで自由に定めることができます。
ただし、財産分与の基本的な考え方として、夫婦は平等にあるとして、特別な事情がなければ、双方でそれぞれ半分ずつに分けるという「2分の1ルール」があります。
したがって、この2分の1ルールを基本としながら、それに個別の事情なども考慮して配分する割合を調整して決められています。
夫婦で一緒に貯めた預貯金などの金融資産は、分割することが容易な財産になります。
その一方で、婚姻期間が長い夫婦は住宅を所有していることがあり、住宅は半分ずつに分けられないため、住宅については財産分与の定め方に工夫が必要となります。
財産分与の決め方
財産分与は、夫婦が婚姻期間中に共同して築いた財産として、預貯金、住宅、自動車、株式、保険、退職金などが対象になります。
夫婦のどちら側の名義になっているかにかかわらず、実体として夫婦の共同財産となる財産は、財産分与の対象になります。
ただし、夫婦が所有する財産でも、婚姻する前から一方が所有している財産、親族等から相続、贈与で譲り受けた財産は「特有財産」といい、財産分与の対象になりません。
預貯金債権などの流動資産が多くあれば、財産分与の手続きは比較的に容易です。
しかし、現実には、夫婦の財産が住宅だけであるケースも多く見られます。このようなときの財産分与は、対応に難しいところがあります。
住宅については、住宅ローンの離婚時における残債と住宅ローン契約の形態(連帯債務、連帯保証など)によっては、その整理が難しいこともあります。
離婚時における住宅の所有者と離婚後の住宅使用者が異なることもあります。
このようなときには、離婚契約において双方の権利と義務の関係を明確にしておくことが求められます。
また、離婚時における借金等債務についても、財産分与に合わせて整理して清算することになります。
夫婦のどちらか一方側に離婚となる原因があるときには、原因者側から他方側へ支払う慰謝料が発生します。
この慰謝料の支払いを、財産分与の中に含める対応も認められます。
財産分与の中で対応することで、表面上は離婚原因の存在が見えなくなります。
こうしたことから、離婚原因のある側は、財産分与での支払いを望むことがあります。
なお、財産分与の中で慰謝料見合いの財産を支払うときは、誤解の生じないように、別に慰謝料を支払わないことを双方の間で確認しておくことが大切になります。
そうしなければ、財産分与の中で慰謝料を負担した側は、別途に慰謝料を請求される恐れがあります。
離婚することで一方が経済的に困窮する恐れのあるときは、その側に対して財産分与の形で金銭給付をする条件を定めることがあります。
こうした扶養を目的とした財産分与は、生活を補助するために金銭給付することから、毎月の定期金を支払う形とすることが一般的です。
こうした目的で行なう財産分与を「扶養的(ふようてき)財産分与」と言います。
財産分与として定期金を支払う期間は、夫婦の状況によって異なります。
熟年離婚の場合には、給付金を支払う側が会社を定年退職するまでとしたり、給付金を受ける側が年金の受給を開始するまでとして期間を定めることが見られます。
扶養的財産分与を定めることは、給付金を負担する側に十分な経済力が備わっており、熟年以上の世代で協議離婚する際に多く見られます。
若い夫婦の離婚においても扶養的財産分与が必要であると見られることもありますが、婚姻の期間が短いときは、相手の新生活のことまで配慮することは難しいようです。
協議離婚になった原因又は理由が夫婦の一方側にあるときは、原因のある側から他方に対して離婚時に慰謝料又は解決金の支払われることがあります。
また、離婚になった原因などが夫婦の双方にある場合は、主な原因をつくった側が他方に慰謝料を支払う義務を負うことになります。
いわゆる「性格の不一致」を理由とする離婚は、離婚になった原因が双方にあるものと考えられることから、理論上では離婚に伴う慰謝料は発生しません。
慰謝料は、やむを得ず婚姻生活を終了させることになって精神的に苦痛を受ける側に対する損害賠償金になります。
慰謝料の額は、婚姻期間の長短、離婚原因の重大さ、双方の経済力、小さな子どもの有無などの様々な要素を踏まえて定められます。
慰謝料の額を定める公認の計算式は存在しません。協議離婚では、夫婦が話し合って慰謝料の支払い条件を定めることになります。
一般には数十万円から500万円までの範囲内で、200万から300万円を中心帯として、離婚に伴う慰謝料の支払い条件が定められます。
離婚の慰謝料は、有責配偶者から受けた精神的な苦痛に対する損害賠償金となるため、その金額をいくらに定めても自由です。
ただし、課税当局から過大な額と認められる慰謝料は、相当とされる額から超過した分に課税を受けることもあります。
夫婦で話し合っても慰謝料の支払い、又はその金額に折り合いがつかないときは、裁判所で慰謝料を定めることになります。
裁判所における実務では、離婚に原因をもたない側が受けた精神的被害の程度、婚姻の期間、未成熟子の有無、双方の年齢、有責配偶者となる側の収入、資産など各要素を踏まえて慰謝料の額が定められます。
離婚に伴う慰謝料は、夫婦のうちで離婚の原因をつくった側が負担するものです。
不倫(不貞行為)が離婚の原因であるときは、従前は有責配偶者と不貞相手の二人が離婚慰謝料を負担する義務があると考えられていましたが、平成31年2月の最高裁判決で「不倫相手は原則として離婚の慰謝料を負わない」ことが示されました。
なお、不倫をしたことに対する法的責任(共同不法行為責任)は、有責配偶者のほか、不貞相手も負うことになります。このことに変更はありません。
そのため、不倫慰謝料の全体を、有責配偶者と不貞相手で分けて負担することになり、慰謝料を請求する側は、不倫した当事者となる両者へ請求する割合を決められます。
つまり、両者の一方だけに慰謝料請求することも可能になり、現実にそうした対応の行われることがあります。
なお、不倫をした二者の間における負担割合は当事者の間で決めることになりますが、そうした当事者の間での調整手続はあまり行なわれていません。
婚姻期間中に夫婦が納めた厚生年金(旧共済年金も含みます)の記録を、離婚のときに一方側から他方側に付け替える手続きを「離婚時年金分割」と言います。
年金分割は厚生年金法で手続が定められている制度ですので、法令上の手続きに従って分割請求手続きを行なうことになります。
年金分割の制度には「合意分割」と「3号分割」の2つに区分されます。
年金分割は、離婚のときに夫婦の間で金銭の授受が行なわれるわけではありません。
離婚後に年金事務所において分割請求手続を済ませておくことで、年金の受給を開始するときに、離婚に際して分割手続をしておいた結果が反映されます。
合意分割は、年金制度の2階建て部分についての婚姻期間中における保険料納付記録を分割の対象とします。
保険料納付記録の多い側から少ない側に対し、記録の分割と付け替えが行われます。
「合意分割」と言われるとおり、夫婦間の話し合いによって分割について合意します。
〔合意分割の対象となる人〕
もし、夫婦の間で話し合いがつかないときは、家庭裁判所における調停又は審判によって分割と割合を定めることができます。
分割する割合は、最大でも2分の1までとなり、分割される側の2分の1を超えること(相手の方を自分より少なくすること)は認められません。
分割できる年金分割の割合は「年金分割のための情報通知書」を確認することになり、年金事務所に請求することで情報通知書の交付を受けられます。
情報通知書が交付されるまでの所要期間は各事務所によって異なりますので、取得を急ぐ場合には各年金事務所へ電話で確認しておくことをお勧めします。
3号分割は、配偶者の扶養になっている期間に適用されます。2階建て部分に対して、自動的に2分の1に分割する制度です。
〔3号分割の対象となる人〕
分割の対象となる期間は、平成20年4月1日以降の婚姻期間になります。
3号分割は分割する割合が2分の1と定まっているため、適用の対象になっていれば、夫婦での合意を得る必要がありません。
また、合意分割のあるときは、3号分割とあわせて利用することができます。
離婚時に取り決めておく代表的な条件は上記に記載するとおりですが、このほかにも、夫婦によっては定めておくこと必要がある条件もあります。
必要となる条件は、婚姻生活の経緯、財産の状況などによって異なります。
例えば、夫婦の間での金銭の貸し借りなど、離婚とは直接に関係しない事柄でも、離婚協議に際して整理したうえで離婚 公正証書に定めておくことができます。
夫婦の関係を解消する機会には、二人の間に存在するすべてについて清算しておくことが基本的な対応になります。
夫婦は同居して共同生活することが基本になりますが、夫婦の関係が悪化したときは、離婚を届け出る前に別居生活に入ることもあります。
一方に不貞行為のあったことが原因で離婚になると、離婚に向けた話し合いに入る前から別居状態となることも珍しくありません。
別居していても法律上の婚姻を続けていれば、夫婦の生活費は双方の収入などに応じて分担することになり、そうした婚姻費用の分担義務は法律にも定められています。
ただし、夫婦の関係が悪いときには話し合いをすることも難しくなり、婚姻費用の分担が公平でない状態の続くこともあります。
そうしたときは、夫婦で離婚する条件を詰めていく中で、婚姻費用の分担が未了となっている期間の婚姻費用を清算することがあります。
財産分与のなかで清算することもできますが、財産分与の対象とする財産がないときは、単独に整理する項目として婚姻費用の未払い分の清算を確認します。
財産分与の対象財産がないときも、婚姻生活を営んできたなかで各種ローンなど債務が残っていることがあります。
婚姻生活を原因にできた債務は、夫婦の双方とも利益を受けていますので、離婚に際しては夫婦で負担して清算することになります。
名義上の債務者となっている側だけで返済することは、不公平になります。
婚姻生活での大きな債務としては、住宅ローンが代表的なものですが、そのほかにも、オートローン、日常生活にかかるクレジットカードの未払い金も清算すべき債務の対象となります。
こうした債務は、債権者に対しては名義上の債務者が返済する義務を負っていますが、離婚後における返済方法を夫婦の間で離婚時に取り決めることになります。
離婚時に一括して清算することが望ましいことですが、資金の関係で不可能なときは、離婚の成立後に分割払いの方法で各負担分を清算することもあります。
なお、婚姻生活に関係しない債務は、夫婦の間で清算することが不要ですので、債務者となっている本人が債権者に対し返済することになります。
婚姻生活には関係しない金銭の貸し借りを、夫婦の間で行なっていることもあります。
婚姻前に存在していた一方の債務について、婚姻した際に夫婦の間で立て替えて返済している事例はよく見られます。
こうした債務は、婚姻期間には夫婦間における返済はすすみませんので、離婚する時に全額を返済すべく整理することが行なわれます。
婚姻の解消によって二人の関係は断たれますので、金銭の貸し借りが残っていれば、離婚のときに財産分与などとあわせて同時に清算することになります。
財産分与として住宅を取得しない側が、婚姻中に住んでいた住宅に離婚した後の一定期間も継続して居住することを取り決めることがあります。
もとは夫婦であった二人ですが、離婚した後は住宅の使用に関する権利と義務を明確にしておくことが必要になります。
そうしなければ、所有者としては相手に住宅を不法に占有されたり、使用者側は突然に住宅から退去を求められたり、住宅ローンの返済が滞ることで住めなくなるなど、離婚した後にトラブルが起きることが心配されます。
使用期間、賃料の有無、維持管理費の負担など、住宅の使用に関する条件を双方で確認したうえで、離婚の公正証書を作成するときは条件を定めておきます。
そうすることで、お互いに、契約に基づく関係となって、安心できることになります。
協議離婚の際に夫婦で決めておく条件、項目について説明してきましたが、このほかにも取り決める項目の出てくることもあります。
そのため、離婚契約(公正証書)のひな型にとらわれ過ぎず、自分たち夫婦にはどうした項目を確認しておくことが必要であるのかを、まずは自然体で二人で考えてみることです。
なお、こうしたことを、沢山のことを決めておくことであると勘違いして、細々した取り決めまでする方も見られますが、木を見て森を見ずに陥ってしまわないように注意が必要です。
夫婦の共同生活を解消した後に必要となる手続き、困るかもしれないことを想像してみることで、大よそのことは見えてきます。
なお、住宅ローン 離婚の整理については知識の不足から冷静に判断できないこともあるようですので、まずは現状を把握して、どうすれば良いのか、それには何ができるかを理論的に考えて適切に判断します。
離婚を急ぐことも多いですが、大事なことは慎重に考えて対応しましょう。
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