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父母間の養育費と子どもからの扶養料請求
親子の間には互いに扶養する義務のあることが法律上で定められており、経済的に自立できない子どもは、父母から扶養(経済的支援等)を受ける権利を有しています。
もし、両親が離婚したことで子どもが経済的に十分な扶養を受けられていないときは、子どもは、非監護親に対して扶養料を請求することも可能です。
離婚することになった夫婦の間に経済的に自立していない子どもがいるときは、夫婦の間で子どもの監護費用の分担となる養育費の支払い条件を決めます。
養育費は、子どもの衣食住、教育、医療などの生活費に充当するお金であり、非監護親から監護親に対して毎月支払われることが基本的な仕組みになります。
これは、親には子どもを扶養する法律上の義務が存在するためであり、婚姻解消後には父母の生計が別々になりますので、子どもの生活費に関する父母間における分担方法を離婚 公正証書などで取り決めます。
こうした扶養義務については、民法において次の規定があります。
〔扶養義務〕民法877条
1 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
上記の規定のとおり、親子の間には互いに法律上の扶養義務があります。
そのため、子どもが経済的に自立できない未成熟子であるときは、親は子どもに自分と同じ水準の生活をさせる「生活保持義務」を負うとされています。
親が経済的に不自由なく生活できている一方で、その子どもが経済的に困窮する生活をおくることは許されない、という法律の考え方になります。
養育費を支払うことも上記の生活保持義務に基づきますが、養育費は父母の間での分担金となるため、父母で取り決めます。
養育費の支払いで子どもが経済的に支障なく生活できれば、問題は起こりません。
しかし、父母の間で取り決めた養育費の支払いでは、子どもが生活ができなくなることも起きてくる可能性があります。
そのようなときは、父母間で養育費の見直しを話し合うことができますが、そのほか、子ども本人から非監護親に対し扶養を請求することができると考えられます。
具体の方法としては、非監護親に対して、扶養料として金銭の支払い請求をします。
扶養料は、子どもの生活費の一部にあたることから、養育費と重なります。
そのため、養育費の支払いによって充足されているときは、子ども本人から非監護親へ扶養料を請求しても認められないと考えられます。
一方、養育費の支払いでは不十分な状態にあるときは、その不足する分を扶養料として請求できるとされます。
たとえば、子どもが大学等に進学したいと考えるとき、その進学資金が足りないときは子ども本人が扶養料を請求することもあります。
なお、子どもが未成年である間は、法定代理人となる親権者から非親権者(非監護親)に対し扶養料が請求されることになります。
親子の間で扶養料の支払条件について話し合うこともできますし、家庭裁判所に対して調停または審判を申し立てることもできます。
これについては、次の条文が参考になります。
〔扶養の程度又は方法〕民法879条
扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。
扶養料の請求は、子どもから親に対して行なうことができます。
離婚することで夫婦とも感情的に激しく対立し、養育費を含む離婚の条件について話し合うことができない状態になっていることがあります。
とくに不貞行為、暴力(DV)が原因となる離婚では、被害を受けた側が相手側と接触することを固く拒絶する姿勢が見られます。
こうしたとき、離婚する時点だけではなく、離婚後も相手と一切の関わりを持ちたくないと考えることがあります。
夫婦間に未成年の子どもがいる場合でも、養育費の支払いや面会交流を実施せず、双方の関係を事実上で完全に断ちたいと考え、養育費の不払いとする合意を行うことがあります。
養育費は、子どもを監護養育するうえで必要な費用ですが、父母間で養育費を不払いとする合意も法律上は有効と認められます。
ただし、あくまでも父母間の合意であることから、その不払いの合意は、子どもに対しては効力が及ばないとされます。
そのため、子どもの監護親が養育費を受領していないことが原因となり、子どもが経済的に困窮する事態に陥れば、父母間で養育費を不払いとする合意をしたにも拘わらず、子ども本人から非監護親に対し扶養料を請求できると考えられます。
相手が扶養料の支払い認めれば、子どもは非監護親から扶養を受けられることになり、経済生活の問題が解消します。
もし、相手が扶養料の支払いを認めないときは、家庭裁判所に調停を申し立てます。
子ども本人から非監護親に対し扶養料を請求することは、現実にはあまり多くは見られません。
扶養料請求に基づく親子間の支払い契約を扱ったことも当事務所でありますが、その事例は子どもが既に成人になっており、通学する大学にかかる学費の負担を求めるものでした。
子どもが未成年であるうちは、子どもの親権者から養育費を請求することにより目的を達せられますので、扶養料請求は一般的ではないと思われます。
ただし、子どもが大学生になって学費又は生活費が足りないときは、子ども本人から扶養料を請求することも考えられます。
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